動きの速い日用品のメーカーの規制対応 - 第1回

握手と規制のアイコン

本ブログは、過去、現在、そして将来の規制が動きの速いさまざまな日用品(FMCG)のメーカーにどのような影響を与えるかを検討する3部構成シリーズの第1回です。医薬品、医療機器、有害成分、水およびビールのシリアル化、食品アレルゲン、タバコ、化粧品の分野を取り上げます。本ブログでは、医薬品の製造に関連する規制と、企業が世界各地のさまざまな規制に準拠する際にマシンビジョンがいかに役立つかを紹介します。 

生鮮食品、加工食品、菓子類、飲料、洗面用品、化粧品、市販医薬品、その他の消耗品といった動きの速い日用品(FMCG)のメーカーは、特定の国や地域で製品を販売する場合、地域や国の規制と国際規制を遵守する必要があります。欧州連合(EU)、ロシア、米国は、規制環境に大きな影響を及ぼしていますが、その他の国、特に中国の影響も大きくなることが予想されています。

FMCG関連の多くの規制では、ラベルとパッケージに特定の情報を記載することが求められており、製品の認証と追跡、偽造と転用の防止を可能にし、税金と関税の徴収に役立つ一意の英数字コードやバーコードをラベルやパッケージにマーキングする必要があることがほとんどです。また、コードは、洗濯洗剤などの製品に含まれる有害成分について、消費者、毒物センター、医療関係者に注意を促すためにも使用されます。食品については、ラベルやパッケージにアレルゲンの有無に関する注意喚起を記載する必要があります。

こうした規制のある市場で製品を販売する企業は、その市場のコードとラベルに関する要件を遵守しなければなりません。医薬品、医療機器、食品、飲料、タバコ、化粧品などの製品は、多くの地域で規制の対象となっています。発効日はさまざまですが、一部の要件はすでに導入されており、導入期限が迫っている要件もあります。

規制を遵守するには、計画や導入時間のほか、ハードウェア、ソフトウェア、システム統合、トレーニングなどへの多額の投資が必要です。最初のステップの1つが、必須の情報を記載し、英数字コード、バーコード、および/または製品識別アイコンを含めるスペースを確保するようにパッケージとラベルの設計を変更することです。アイコンは事前に印刷されていることが多いですが、コード、特に一意の品目レベルのコードは、梱包ラインでインクジェットや感熱方式で印刷するか、レーザーでマークを付けるのが一般的です。そのためには、コード印刷システム、ラインがコードデータを送受信するための接続、検証・検査・データ収集を実行するビジョンセンサまたはシステムを梱包ラインに導入する必要があります。

ファクトリラインで走査される白いコンテナ

マシンビジョンシステム、AIベースのテクノロジ、画像ベースのバーコードリーダは、以下を実行できます。

  • 各コードが判読可能で正しいことを確認する
  • データを収集する
  • 不適切な印刷品質、傾向、エラーを識別する
  • ユニットレベルのコードと箱レベルのコード、ケースレベルのコード、最終的にはパレットレベルのコードとを紐付けるアグリゲーションプロセスを自動化する
  • 納税印紙を検証する
  • コーディング機器のメンテナンスが必要な場合にアラートを発することで、廃棄(無駄)とリワークを防止する
  • 日付、ロットコード、アレルゲン情報の欠損と可読性を確認する

完全にエンドツーエンドの追跡性を実現するには、ビジョンシステムまたはバーコードリーダをサプライチェーンの各ポイントにも設置して、製品の認証と、メーカーから消費者に届くまでの製品追跡のために必要なデータを収集する必要があります。これらのコーディングシステムとマシンビジョンシステムは、医薬品、食品・飲料、医療機器、タバコなど多くの製品が既存および将来のコーディング要件を満たすために梱包ラインに必要です。

医薬品

積み重ねられた医薬品の白い箱とオレンジ色の薬瓶 

偽造医薬品指令(FMD)は、EUで販売される大半の処方薬と一部の市販医薬品の各レベルのパッケージにシリアルバーコードとテキストを付すように義務付けています。また、追加要件を課すEU加盟国もあります。その目標は、輸送中の医薬品をサプライチェーン全体で追跡および認証できるようにし、偽造医薬品が市場に出回らないようにすることです。

コーディング要件を遵守しない企業は、EUで製品を販売できなくなります。製薬会社の品質管理担当者は、製品がEUと出荷先の国のコーディング要件を満たすとともに、医薬品適正製造基準(GMP)と電子署名規制を遵守するよう徹底しなければなりません。EUと加盟国レベルの規制当局は、遵守について監査を実施しています。

EU加盟国ではないロシアは、医薬品に関する独自のコーディングシステムを定めています。このシステムは、人間が判読可能なシリアルコードと追加機能を備えたDataMatrixコードで構成されるCrypto Codeを使用しており、医薬品とその他一部の製品に対してすでに発効されています。1ロシア連邦のCenter for Research in Perspective Technologies(有望なテクノロジ研究センター)は、全国的な追跡・トレース統一システムであるChestny ZNAKの導入を監督しています。これには、Crypto Codeの割り当て、デジタルデータベースのメンテナンス、商品の移動記録、製品の認証が含まれます。

シリアル化されたCrypto Codeは、闇市場への流出防止に役立つほか、医薬品、靴、香水、自転車、タイヤなどの輸入品に対してロシアが税金を徴収できるようにします。このコーディング要件により、出荷先がロシア市場の製品には適切なシリアルコードをマーキングする必要があります。遵守しない場合、ロシアで製品を販売できなくなります。

米国にも、医薬品サプライチェーン安全保障法(DSCSA)に基づいた、処方薬に対する類似の要件があります。パッケージ上のコーディングに関する期限はすでに過ぎていますが、GS1のElectronic Product Codeインフォメーションサービス(EPCIS)を経由した取引先との取引データの送信に関する期限は近づきつつあります。しかし、2023年11月27日の期限に間に合うように準備が整っている関係者は多くはありません。Healthcare Distribution Alliance(ヘルスケア製品流通アライアンス)のHDA Research Foundation(HDA研究財団)の調査によると、出荷時に卸売業者である顧客に少なくとも一部のシリアル化したデータを現在送付している、または送付を予定しているメーカーは全体の40%、2023年11月までに一部の送付を開始する予定のメーカーは全体の43%でした。残りの16%は、すべての製品について卸売業者とデータを交換する予定時期はわからないと回答しました。準備不足の一因は、シリアル化したデータを送信するための必須条件であるアグリゲーションの導入が多くのメーカーで遅れていることにあります。

サプライチェーンのパートナー間でシリアル化したデータを共有するという要件を満たすためには、ビジョンシステムを導入して、コードの走査プロセスを自動化し、施設内を移動する各荷物からデータを取り込むために必要な追加人員を最小限に抑えることが恐らく必要となるでしょう。

DSCSAの期限に間に合わない場合、罰金、ライセンスの停止、禁固、または民事制裁金の対象となる場合があります。現在のところ、FDAは不履行に対する訴追を保留しています。しかし、保留期間が終了すれば、違反者には罰則が科されます。

その他の多くの国では、さまざまなレベルのシリアル化導入の取り組みが進められています。保留となっている期限の一部を下表に示します。

医薬品のシリアル化期限および要件

シリアル化要件

遵守期限

バーレーン

メーカーによる製品のアグリゲーション

2022年5月

国内の代理店/販売店によるシリアル化、アグリゲーション、報告要件の遵守

2022年6月

ブラジル

製品のシリアル化およびサプライチェーン全体における追跡

2025年4月1日

インドネシア

認証用二次元DataMatrixバーコードの製品への付与

2025年

アラブ首長国連邦

アグリゲーションおよびシリアル番号の報告

2023年1月1日


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